卒業生とその進路

サブスレッショルドCMOS-LSIのためのオンチップ電源


嶋田 英人

2010 年度 卒 /修士(工学)

修士論文の概要

本論文は、著者が北海道大学大学院 情報科学研究科在学中に、機能システム学研究室においておこなった、"サブスレッショルドCMOS-LSIのためのオンチップ電源"に関する研究の成果をまとめたものである。

近年、より低消費エネルギーのセンサネットワークの構築と多種多様なスマートセンサLSIが要求されるようになった。これらセンサLSIは広範囲、かつ多量に分散配置され、限られたエネルギー源で長時間動作(ボタン電池で2〜3年)することが要求される。その要求に応える一つの手法として流れる電流が数μA以下のMOSFETのサブスレッショルド特性を用いることが挙げられる。しかし、サブスレッショルド領域は周辺温度、外部電源の変動、さらにMOSFETの閾値バラつきに非常に敏感に影響されてしまう。故に、本研究ではそれらの影響も考慮にいれたサブスレッショルドCMOS-LSIのための電源回路を設計することが目的である。サブスレッショルドCMOS-LSIの応用では、流れる電流が数nA〜μAであるため、高い速度性能は要求されない。しかし最低限の用途に応じた所定の速度はみたす必要があり、消費エネルギーとの兼ね合いが必要となる。つまり「用途に必要なゲート速度が得られる範囲で消費エネルギーが最小」となるようにLSIを動作させなくてはならない。このためLSIチップ上に専用の電源回路を設けることが必要となる。本研究では、以上の仕様を満たす電源回路の設計をおこなった。

構成として、まず理想的なサブスレッショルドCMOS-LSIのための電源回路の設計法を説明し、その問題点を挙げる。次に、本研究のシリーズレギュレータ型、スイッチングレギュレータ型の電源回路のより現実的な設計法を提案し、解説する。具体的な回路構成として、まずシリーズレギュレータの基本構成を説明し、シミュレーションの結果(出力特性、ラインレギュレーション、ロードレギュレーション、電力効率など)を示す。チップの試作、測定も行ったので、その結果をシミュレーションの結果に則して示し、比較する。

次いで、スイッチングレギュレータの基本構成を述べ、シミュレーションの結果(出力特性、ラインレギュレーション、ロードレギュレーション、電力効率など)を示す。最後に、シリーズレギュレータ型電源回路、スイッチングレギュレータ型電源回路の特徴をまとめ、具体的な数値をもとにそれぞれの性能を比較し総括する。