卒業生とその進路

無地物体の動き検出に向けた縞生成処理アクセラレータの設計とその FPGA 実装に関する研究


谷端 蒼

2017 年度 卒 /修士(情報科学)

修士論文の概要

近年第4次産業革命の実現を前に、動き検出により得られた情報から動体検出や人物の追跡・異常検知などを行う映像解析アプリケーションの実用化が広がり始めている。今後も動き検出技術を活用するより高度で複雑なアプリケーションの開発が見込まれる中で、動き検出技術そのものの精度向上への要求が高まっている。

従来の動画像中の物体の動き検出において一般的に用いられる計算手法では、対象画像の特定座標あるいは特定領域に部分的に注目してフレーム間の輝度の変化に基づき計算を行う。この計算の性質から無地の動物体の輪郭の内側では輝度の変化が生じないために動きが検出されないという問題があった。このように実際の動きに反して動きが検出されない領域が発生すると、本来得られるはずであった物体の輪郭内側の動きに関する情報が欠落してしまうこととなるため、動き情報を元に処理を行う後段のアプリケーションに悪影響を与えてしまう可能性がある。この問題の解決策として、動き検出の前処理として無地物体に対して物体の輪郭に基づく固有の模様を生成するという方法が提案されている。各フレーム間において輪郭情報に基づく縞生成を行うことで、各フレーム間で同じ輪郭をもつ物体には同じ模様が生成される。この前処理により同一の物体には同一の模様が生成されて追従することになるため、無地領域も模様を持った物体と同様にみなすことができ、無地領域においても動きを検出することが可能となる。しかしこの縞生成処理は繰り返し処理を多く含み膨大な処理時間を要するため、動き検出の前処理としての実用は困難であった。

そこで本研究では従来の動き検出手法の弱点とも言える 無地物体の動き検出の克服によって動き情報を利用するあらゆるアプリケーションの誤動作を抑制し性能を向上させることを目的として、動き検出の前処理としての縞生成処理を高速化するアーキテクチャの設計を行なった。さらに提案アーキテクチャと周辺回路を含む実時間動作プロトタイプシステムをFPGA(Field Programmable Gate Array)上に実装し、250×250ピクセルの処理ウインドウサイズにおいて約30 fpsの実時間動作が可能であることを検証した。